Why did we start Musical For All? 理事長に聞く、市民ミュージカルの存在意義

ダイバーシティ&インクルージョンは、わたしとあなたのこと──。
コモンビートは、「わたしとあなた」という一人ひとりを起点にして、個性を響き合わせ、多様な価値観を認め合うことを目指しています。主要な活動であるミュージカルが、そもそも多様な価値観を受け入れているのか? この自問自答から、Musical For Allは始まりました。こちらの記事では、コモンビート理事長の「りょう」に「そこのところ、どうなのよ?」と突っ込んで聞き、「なるほどね」と腑に落ちたことを書かせていただきます。あっ、コモンビート広報室の「つかちゃん」こと塚原がお届けします。

Q.Musical For All、なんで始めたの?

気になるこの質問を、まずりょうにぶつけてみました。すると返ってきた答えは、「だって、ダイバーシティ&インクルージョンを謳っているNPOなのに、主要な活動のミュージカルが、『マジョリティ』にしか届いてないって、おかしくない?」でした。そりゃそうだ…。

画面左:塚原宏樹(つかちゃん) 画面右:安達亮(りょう)

私たちコモンビートは、ビジョンとして「多様な価値観を認め合える社会」の実現を目指しています。実際、コモンビートの現場では、「見える(表層)」「見えない(深層)」を問わず色んな違いがあること、そして一人ひとりが違う事を前提にして場が作られています。だからこそ、りょうは「おかしくない?」と思ったようです。理事長としてビジョンを実践しきれていないと感じたのでしょうね、りょうの(長い)話を聞いて、「あっ、もやもやしているんだな〜」と思いました。

例えば、これまでは「心身ともに健康であること」をミュージカルの参加条件にしていました。今思えば、「なんだこれ」という感じです。私たちコモンビートは、市民活動としてミュージカルをしています。りょうは、「20年の実績を重ねても、やることは一杯あるんだよね〜」と言います。この「市民」がポイントで、きっとプロの劇団だと社会福祉の位置づけで、障がい者などに鑑賞の機会を広げると思います。コモンビートは、健常者と障がい者も、マジョリティとマイノリティも関係なく、あらゆる市民の活動として進めたい。だから、Musical For Allなのです。

Q.で、Musical For Allって、なにするの?

気になるMusical For ALLの中身を、りょうに聞きました。第一声は、「コモンビートの醍醐味であるエンターテインメントをより多くの市民に開くなら、まずは『鑑賞』からでしょう」でした。そうなんです、見るのが難しい人、聞くのが難しい人など、舞台鑑賞へアクセスしづらい方々にミュージカルを届けることから始める。それが、Musical Forl Allの第一歩です。そして、参加と鑑賞の多様化サイクルを回したいと、私たちは思っています。

こちらの写真をご覧ください。市民が100日で作り上げた舞台に観客が惜しみなく拍手を送っています。観客の中には、「私も舞台に立つ!」と次のプログラムにキャスト参加する人も多く、コモンビートのミュージカルはそういう循環で20年間運営されています。より多くの人に鑑賞していただければ、より多くの方が参加もできるようになる。エンターテイメントを享受できるようになる。だから、見えない、聞こえないとかで鑑賞の機会を制限したくない。りょうは、めちゃくちゃ強く言います。

実は、すでにちょっとずつ始まってる!?

とはいえ、見えない人や聞こえない人も鑑賞できるようにするには、「音声ガイド」や「字幕」などの用意が必要になります。私たちにはノウハウがないので、さまざまな方や団体に相談したりヒアリングしたりと、必死で準備を進めています。ぜひ、クラウドファンディングや、今後開始するマンスリーファンディングで、私たちと一緒にMusical For Allを形にし、多様な価値観を認め合える社会を共に作っていただけると嬉しいです!

そして、ぜひ観に来てください。「コモンビートは、Musical For Allをやるって言ったけど、本当に今まで機会のなかった人に届けられている?」と、実際に来て体感してください。そして、「こうした方がいいよ」ということがあれば教えてください。良かったところを誉めて、直すところを教え、一緒に動いていただけるなら、コモンビートはダイバーシティ&インクルージョンをもっと実践できます。

そして今、2023年8月の57期東京公演に向けて、市民が汗をかき、歌い、踊り、ぶつかり合い、作品を作り上げています。このキャストの中には、見えない人が2名、車椅子の人が1名います。まずは観客に間口を広げようと思っていましたが、すでに舞台に立つ人から少しずつMusical For Allが始まっています。
りょうに、「うまく運営できているの?」と聞きました。すると、「最初は迷ったんだけど、運営スタッフが『できる、やりたい』って言うんだよね。そして、実際に試行錯誤しながらやっている」とのことです。もちろん、これまで参加していなかった人たちにとって、いきなり快適な内容になるとは思いません。でも、稽古、ダンス、議論などが、少しずつ変化しています。僕も現場に行きましたが、誰も何も言わなくても、困っている人がいれば、周りの人がそっと手助けする感じです。

あぁ、自分はマジョリティだった

最後に、りょうに「一番、言いたい事は?」と聞きました。すると、「恥ずかしいんだけど、自分がマジョリティ側に立っているって、気づいてなかったんだよね」と言います。コモンビートの理事長としてダイバーシティ&インクルージョンを推進しているのに、団体側の配慮が至らないことで、コモンビートの活動に参加できない人がいることに気づかずに過ごしていた。そのことが悔しくて、でも気づいたから、社会のゆがみが見えるようになったそうです。

歌が得意、ダンスが好き、台詞を覚えやすい、計算が得意、人付き合いが好き。そういう人がいます。同じように、音痴で音程を外す、運動が苦手、記憶力に自信がない、数字は遠慮したい、大勢で騒ぐのは苦手という人もいます。それぞれが特徴、聞こえない、見えないも特徴。そんなそれぞれの特徴を認めて、市民が市民とミュージカルを作り、楽しんで、ダイバーシティ&インクルージョンを実践し、多様な価値観を認め合う。理事長のりょう、私たちコモンビートと一緒にそういう社会を作っていきませんか?